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自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言のメリット、デメリット

2023.04.14

自筆証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言を作成するメリットは、なんといってもその作成のしやすさです。

民法によると「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と規定されています(民法968条)。この民法の要件を備えることができれば、自筆証書遺言として遺言を遺すことができるのです。

ただ、注意点もあります。要件をしっかりと確認してください。自書するのは「全文」です。よくあるのはパソコンで自筆証書遺言を作成し、その文末にサインをするように自分の名前だけ自書することです。これでは遺言は無効になってしまいます。自筆証書遺言は手軽な反面、作成には注意が必要です。
※以前は遺言書の内容を全て自筆で書く必要がありましたが、2019年1月に法改正があり、財産目録に限ってはパソコンでの作成や通帳のコピー等でも良いとされるようになり、より手軽に作成することが可能になりました。

費用もかからず、作成するのが手軽な半面、不備や保管の仕方がしばしば問題になります

自筆証書の遺言書を作成するには、前述のように法律で定める方式に従うことが求められているため、一見すれば、自筆証書による遺言書は、とても簡単な手続で作成できるように見えます。

しかし、現実には、法律で定める方式を欠いてしまう無効な遺言書も多くあるとされており、自筆証書遺言は、一定の法律知識を持ち、十分な注意を払って作成することが求められます。

遺言書に日付の記載を忘れたり、内容の修正方法を法律で規定する通りに行わないことも、現実には起きてくるのです。

そして、遺言書の内容(解釈)が明確になっていないと、遺言書の内容に無効になる部分が生じてしまったり、相続が始まってから相続人の間で遺言解釈の相違が原因で相続争いになってしまうこともあります。

こうしたことから、自筆証書遺言は簡単な遺言には向いている方法であるかもしれませんが、やや複雑な内容となる遺言では、法律専門家の確認を受けて作成する方が望ましいでしょう。

また、自筆証書遺言の場合、開封前に広島家庭裁判所等で検認を行わなくてはなりません。検認前に遺言を開封してしまうと罰則が科せられます。

遺言の内容や遺言を書いたこと自体を誰にも知られたくないという場合は自筆証書遺言でなければ叶いませんが、それにより遺言者の死後に遺言自体が発見されないという可能性があります。

自分にとって不利な内容が書かれた遺言書を相続人や利害関係者が発見した場合、勝手に改ざん、処分される可能性は、公正証書遺言や秘密証書遺言よりも高くなります。

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言は、公証人役場(広島県内には6カ所)で作成する遺言書で、自筆証書遺言に比べ費用も手間もかかります。

しかし、作成した遺言書の原本は公証役場に保管されるので改ざんや紛失の心配がなく、遺言書の書式も作成時にチェックされるため、不備による無効の心配もありません。
確実に自分の希望を伝えたいということであれば、手間や費用をかけてでも公正証書遺言が最適です。

また、開封時に広島家庭裁判所等での検認は必要ありません。
遺言者が亡くなった場合には、その公正証書遺言を使ってすぐさま預貯金の解約や不動産の名義変更を行うことができるようになるのです。

公正証書遺言を作成するには、証人が二人必要です。
遺言者の推定相続人や直系血族、受遺者など、利害関係が生じる人物や未成年者は証人になることができません。それ以外の人物であれば、ご友人などに証人をお願いすることもできます。
なお、広島相続遺言まちかど相談室では証人も引き受けておりますので、証人が必要な場合にはお気軽にお申し付け下さい。

公正証書遺言では、遺言書の内容を公証人と証人に知られることになります。もちろん、公証人にも証人にも守秘義務がありますので、遺言の内容を推定相続人などの関係者に知られることはありません。
しかし、「たとえ関係のない人であろうと遺言の内容を誰にも知られたくない」「そもそも遺言を作成したこと自体を知られたくない」という場合は、自筆証書遺言を検討した方が良いかもしれません。

秘密証書遺言のメリット・デメリット

秘密証書遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言の両方の特徴をもった遺言作成方法です。 しかしながら、我が国においてはほとんど利用されていない方式でもあります。
公正証書遺言と同じで公証役場で作成し、原本は公証役場に保管されます。 しかし、証人や公証人による中身の確認がなく、遺言内容は誰にも知られることがありません。

「遺言内容は誰にも知られたくない、でも自分で遺言書を保管しておくのでは改ざんや紛失が心配」という場合は秘密証書遺言が有効です。

しかし、公証役場で作成するので費用がかかりますし、法的に無効な書き方になっていないかのチェックもありません。また、開封時には自筆証書遺言と同じく、広島家庭裁判所等で検認をしなければなりません。

例外:危急時遺言

遺言者の死が差し迫った状態で、上記3つの遺言ができないときに行う特別な遺言の仕方です。
しかし、「証人が3人必要」「死が差し迫った状態で冷静に遺言を伝えることが困難」などの理由から、実際に利用されることはあまりありません。

詳しくは「危急時遺言について」のページをご確認ください。
危急時遺言について